「…」
「…」

―シャリ。
―ガリッガリッガリッ。

手にしているのは真っ赤に熟した、子どもの手に丁度良い程の大きさの果実一つ。
甘酸っぱさが大好きな果物だったのに、今日はその酸っぱさだけが口の中に苦く広がる。
自然と手の運びが遅くなってしまう。
背中越しに無言で食べ続ける相手の気配を伺ってみる。

―ガリッガリッガリッ。

此方の気配に意識を集中させているくせに、わざと知らぬふりをしている、そんな気配を感じる。

「…」
「…」

―シャリ。
―ガリッガリッガリッ。

聞こえるのは、互いに果実を咀嚼する音だけ。




+++++++++++

戌吊時代捏造イラストです。
設定的に、

・他の3人と違ってちびルキア&ちび恋次は霊力の素養あるからお腹減る
 →バッド、戌吊では食べ物なんて大人は勿論子供では中々手に入れることなんて出来ません!!
 →基本自分たちで魚釣ったり野原とかに生えてる物食べるか、盗むくらいしか手に入れられない
 →(捏造)美味しい果物栽培してるとこが一つだけあり!!しかし其処は強欲でヤバイ奴の敷地だ!!
 ■激しくたまーに皆で夜とかに皆でこっそり行って盗んで食べる(果物=ごちそうみたいな感じ)
 ■暗黙の了解として
 「1人では決して行かない事」
 「周りの了解を得ず勝手に行かない事」
 (とっつかまると何されるかわからない程デンジャラスな奴の敷地だから)
 ■戌吊キッズはお腹減んなくても手に入れた食べ物は仲良く等分する

・ある日のちびルキア「皆と出会って●年経つな…何か記念にありがとうの気持ちを伝えられないか…」
 →「そうだ!あの果物を内緒で取って来てプレゼントしよう!!」
 →ちびルキア皆に内緒で一人で計画・実行する
 →何とか無事に果物ゲット!!
 →皆に喜んでもらえる!ウキウキしながら帰宅(宅…?)
 →ちび恋次発見。「おお、恋次!」
 →…んが。果物出した途端に恋次激怒。「一人で行くんじゃねえっつったろ!?」
 →言い合いに発展
 →ちびルキアそっぽ向いたちび恋次の所に果物を何個か置いてしょんぼりしながら他の皆の元へ。
 →喜ばれる。さっきの事を話すと皆からちび恋次がちびルキアを心配しての事だとちびルキアを諭す。
 →ちびルキア「だからと言って頭ごなしに怒鳴りつけなくたって良いではないか…」とすこーし不満を持ちつつも反省。
 →ちび恋次の所へ行く。相変わらずそっぽ向いたまま座ってさっきの果物を一個かじってる。
 →背中合わせで側に座る。ちび恋次そっぽ向いて無言のまま一個ちびルキアに渡す。
 →ちびルキア受け取る。双方無言のままシャリシャリ。

↑こんな場面です。皆で仲良く食べらんなきゃどんなに美味しいものでも不味く感じちゃうってやつですな。
 まだ「別に何もなく無事に戻ってこれたのだから」という少し憮然とした気持ちも残ってる為ブッチョ面なちびルキアです。
 &ちび恋次が怒鳴って怒るほど心配してくれてんのもわかった為謝ろうと思いつつ中々言い出せない…といった場面。
 説明が長すぎますね…ホントはSSにしようと思ったのですが気力がなかったという駄目駄目人間です。

+++++++++++

「…恋次。」

そのままの態勢で声をかける。
かじる音が止む。

「……なんだよ」

ちょっとの沈黙の後で返事が返ってくる。
不機嫌そうな様子の声。

「すまぬ。心配させて」

「…」

また、沈黙。
ハァ、と恋次が息をついたのが聞こえた。
許してくれないのだろうか、不安になってもう一度名を呼ぶ。

「恋次?」

背後で相手が立ち上がる気配する。
ペタペタと近付いてくる足音。

「お前さぁ、どうせ皆の分っつって自分の分少なく分けてんだろ?」

全然応えになっていない返事が返って来て、横にドカッと恋次が座り込んだ。
そしてもう一つ、さっきのよりは赤みがまだ薄い果物を差し出して言った。

「これもいいから食えよ。」

皆へのプレゼントだったので、ルキアの分は勿論一個もない。
しかし、皆にあげたのは一人三個ずつ。さっきもらった食べかけの果物がルキアの手にはある。

「いや、恋次それは…」

隣りの相手を見ると、手に持たれた食べかけの果物が目に入った。
まだそれは青くて熟すというには程遠い
―そういえば、自分のそれに比べると恋次の方から聞こえる果物をかじる音は妙に硬そうな音だったかもしれない―

「―恋次。お前の方こそそんな不味そうなものをかじっておらんでそれを食え!」
「あ?オレはこんぐらい酸っぱいのが丁度良いんだよ!!んなの甘過ぎて食ってられねえよ!」

以前この果物を皆で盗んで食べた時に、恋次が熟したのを食べて
「くーッ!!やっぱこんだけ熟してると甘くて美味いよなぁ」と言って皆と一緒に嬉しそうに満面の笑みを浮かべていたのを
覚えているルキアにはそれが嘘と容易く見破れる。
しかし、言っても素直に恋次が食べ頃になった果物の方を食べそうにはない。

「…ふむ。私も実はこの甘さには辟易しておったところなのだ。自分だけ美味しく食べておらんで私にも少し寄越せ!」

そう言って素早く自分の食べかけの果物と恋次のそれを交換してしまう。

「あッ!ルキアてめッ!」
「フッ。油断大敵、だな。」

ニヤリと笑いかけて、ガリッとかじり付く
―やはりまだまだ食べ頃には遠い果実は苦いし硬いし酸っぱいし―
はっきり言って不味かった。

「…おい、ルキア」

渋さに顔まで渋面にならない様必死に我慢していると、今度は恋次がルキアに声をかけてきた。

「何だ、返さぬぞ」
「…今度よ、これを取りに行きてえと思ったときは」

横を向くと手に持った真っ赤な果実の黄色い果肉の断面をじいと見つめる横顔。

「…」

黙って次の言葉を待つ。

「黙って一人で行くなよな。オレに…オレ達に言えよ。」

あと、とその手の果物から目線が此方に向けられる。
本当に付け足しといった様な風に。
ボソッと一言。


「果物、ありがとよ。」


「…ああ。」

さっきの意地悪そうな笑いではなく本心からにっこりと相手に笑いかける。



口の中に広がる渋みが少しだけ、和らいだ様な気がした。




+++++++++++END


果物はプラムの仲間とかそんなイメージです。
ザ・適当(爆)。

+++++++++++

2009/05/22